「角丸の下がり壁と筋交いあらわしの小さな工夫」と「制震と耐震は役割が違う」と「目配り・気配り・心配り」の巻/2025年2月号
寒い日が続いた2月。そんな中でも、練馬区Y様邸と西東京市I様邸の家づくりは着実に進んでいます。心残りなのは、調布市K様邸の完成写真。残念ながらタイミングが合わず、今月も撮影することができませんでした(泣)
目次
1.調布市・K様邸(スキップフロアと大きな土間のある家)
2.練馬区・Y様邸(北欧テイストの2階建ての家)
3.西東京市・I様邸(鳥さん部屋と円形洗面室のある家)
◎調布市・K様邸(スキップフロアと大きな土間のある家)
ステキに完成したK様邸を、早く紹介したいのですが、K様のご都合やカメラマンのスケジュール、さらに天候が合わず、今月も撮影ができませんでした(泣)。楽しみにしてくださっていた皆様、本当に申し訳ありません。次回こそは紹介したいと思っています。もう少しだけお待ちください。
◎練馬区・Y様邸(北欧テイストの2階建ての家)
セルロースファイバーを使った充填断熱(内断熱)工事に続き、付加断熱(外断熱)工事が始まりました。建物の壁を内側と外側から分厚い断熱材でサンドイッチのように挟むのが、当社の基本的な断熱仕様です。一度暖まった(冷えた)空気は魔法瓶のようにいつまでも暖かい(冷えた)まま。そんな家を作っています。
前置きはさておき、付加断熱工事の様子をレポートしていきます。下の写真は、気密塗料を塗った耐震壁材の上からEPSボードという付加断熱用の断熱材を貼っているところです。建物の壁全体に隙間なく貼り付けていきます。
EPSボードは、1957年に建築された南極の昭和基地にも使われている歴史ある断熱材なのですが、最近白から灰色に色が変わりました。炭素繊維が配合されて、もともと高い断熱性能が、ほんのわずかですがさらに良くなっています。
EPSボードは、ベースコートという専用の接着剤を使って、壁に貼り付けていきます。固まるまでの間にズレて隙間ができないように、ところどころつまようじのような棒で仮止めしておきます。
家の表面には窓枠などがあるため、EPSボードを貼る過程でどうしても小さな隙間ができてしまいます。そうした隙間には、細かく切断したEPSボードをはめ込んでいきます。
下の写真は、熱線式スチロールカッターという機械でEPSボードをカットする職人さん。EPSボードは、ノコギリで切断することもできるのですが、この機械を使うと切断面がまっ平になるので、隙間なくぴったりはめ込むことができます。
ここからは大工工事が進む家の中を紹介していきます。
まずは2階リビングの写真。上がロフト、下がキッチンです。壁下地の石膏ボードが貼られて、すっかり家らしくなってきました。
もう一枚、リビングの写真。キッチンの側から撮っています。黄色の矢印の先には当社が30年くらい前から掲げている標語-「目配り・気配り・心配り」-が貼ってあります。
目配り→細かいところに、注意を払う
気配り→相手に関心をもち、なにを求めているのかわかろうとする
心配り→相手を思いやり、相手の立場になって考え、行動する
30年ほど前に流行った言葉で、ご存じの方も多いかもしれません。家づくりにおいて大切な心構えが簡潔に表現されているような気がして、現場のよく見えるところに貼るようにしています。
ここからは、Y様邸で進行中の造作工事のいくつかを紹介していきたいと思います。
[造作工事その1/洗面ルームの角丸の下がり壁]
上部が半円形になった「アールの下がり壁」を要望されるお客様が多い中、Y様のご要望は「角丸の下がり壁」。アールの下がり壁はかわいらしすぎるし、かといって直角にするのも味気ない…ということでこの形になりました。なかなかいい感じに仕上がったと思います。
ちなみに造作的にはそんなに難しくはないのですが、Y様邸の壁には仕上げ材として、薄くて、あまり伸び縮みしない紙クロスを貼るので、クロス職人さんはとても苦労されると思います。
[造作工事その2/階段上部の見せる筋交い]
下の写真は、1階から2階への階段を上がりきった先にある筋交いです。圧迫感を減らして開放感を出すため、上半分は表し(あらわし)にしています。
写真をじっくり見ていただきたいのですが、木の板に四角い穴を3つあけ、その穴に柱と筋交いを通しているように見えませんか?
実際のところ、物理的にそのような作り方は不可能です。一枚の板を筋交いと柱の形状にあわせて凸凹にカットして、両サイドから挟むように組み合わせた上で、つなぎ目を消しているのです。こういう造作は当社の得意とするところで、大工も口では「大変だ」と言いながら、笑顔で仕上げてくれます。
[造作工事その3/トイレットペーパーストック]
「圧迫感が出るので、トイレ内に吊り戸棚を作りたくない。でも予備のトイレットペーパー置き場は絶対に必要!」という奥様のご要望にお応えして、壁に埋め込むかたちでトイレットペーパーストックを作りました。
[造作工事その4/階段の手すり]
既製品を使う建築会社が多いですが、当社では造作しています。手すりひとつで家の印象はかなり違ってきます。
[造作工事その5/シューズクロークの壁]
シューズクロークの壁は、OSB合板と有孔ボードを組み合わせています。有孔ボードにはさまざまなフック金具を取り付けられるため、便利に活用できます。OSB合板には、棚などをDIYで設置される予定です。
以上、進行中の造作工事のご紹介でした。…と、ここまで書いたところで、新たにパテ処理完了の写真が届いたので、ついでに載せておきます。
パテ処理とは、クロスを貼る前の下準備として、石膏ボードのつなぎ目やビスの頭をパテで均す作業のことです。Y様邸の壁には「エコフリース」という紙クロスを貼ります。エコフリースは一般的なビニールクロスに比べて非常に薄い素材のため、凸凹が出ないよう、丁寧にパテ処理を行います。
◎西東京市・I様邸(鳥さん部屋と円形洗面室のある家)
先月、上棟を行いました。下の写真は、2階の床を貼り終えた状態のI様邸です。
垂木(たるき)や母屋(もや)、小屋束(こやづか)など、屋根を支える構造体までできあがりました。
左下の板は野地板(のじいた)、屋根の下地材です。これから垂木の上に貼っていきます。
野地板を貼り終えました。あみだくじのように見える太い黒線は、気密テープです。野地板と野地板の間の隙間をこれで塞ぎます。気密テープには伸縮性があり、地震で野地板が大きく揺れ動いても、簡単には剥がれないようになっています(もちろん限度はあります)。
上棟が終わりました。夏、日が長い時期は耐震ボードの施工までやったりしますが、今の時期はここまでです。
無事に上棟を終え、ホッと一息という雰囲気の大工と職人さん。家づくりはここからが本番です。
もう一枚、上棟完了後の写真です。I様邸の屋根は、建物の壁から大きく外に張り出す、張り出し屋根です(跳ね出し屋根ともいいます)。張り出し屋根は風の影響を強く受けるので、通常の倍の本数の垂木を入れています(黄色い矢印部分)。なお、垂木の数や間隔は経験に基づく目分量ではなく、きちんと構造計算を行い、必要量を算出しています。
上棟の翌日、防蟻処理を行いました。小野寺工務店では、ボラケアというホウ酸塩を主成分とした防蟻・防腐剤を使用しています。ホウ酸塩はシロアリにとっては猛毒ですが、人が普段食べている野菜にも含まれている成分であり、人やペットが舐めても無害です。
決められた高さまで、ボラケアをしっかり塗っておきます。
防蟻処理が終わり、耐震ボードの施工が始まりました。I様邸では、I様のご要望により、耐震ボードの下に制震テープを施工しています。
下の写真の矢印の先にある白いテープが制震テープです。制震テープは弾力性のある両面テープで、柱と耐震ボードの間に挟み込むように貼ることで、地震のエネルギーを吸収し、揺れを軽減する効果があります。
ここで、「耐震」と「制震」の違いを簡単に説明しておくと、耐震とは、建物を強固にすることで、地震の揺れによる倒壊を防ぐ仕組みです。一方、制震は、地震の揺れを吸収して揺れ幅を小さくし、建物や内部の人へのダメージを軽減する仕組みです。両方を組み合わせることで、より地震に強い建物になります。
このように制震テープの上から耐震ボードを貼っていきます。
「あれ?耐震ボードは制震テープで貼り付けるだけなの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください!貼り付けた後に、釘でしっかりと柱や梁に固定します。
耐震ボードの施工が終わりました。この後、耐震ボードの上に気密塗料を塗っていきます。
[おまけの写真]
こちらは、上の写真から約1週間後に撮影した室内窓の写真です。手前がファミリークローゼットで、4つ並んだ窓の向こう側が、4羽のオウムさんのお部屋になります。
クローゼットからオウムさんの様子が見えるように室内窓を設けたのですが、この窓にはYKKAPのAPW430という、トリプルガラスを採用した高性能な窓を使用しています。室内窓にこういった高性能な窓を使うことは稀なのですが、今回はオウムさんの鳴き声対策として、防音性能にも優れたAPW430を採用しました。
頑丈な窓枠の小さな窓が等間隔に並ぶ様子は、水族館の深海魚コーナーのようで、どこかワクワクさせられます。
(続く)