「三鷹パッシブハウス(予定)の完成写真大公開!」と「厚さ6ミリのドア枠に隠されたヒミツ」と「鳥さん部屋のあるお家を作ります!」の巻/2024年11月号
今年2月から家づくりが始まった、三鷹市S様邸が完成しました。現代的な和風デザインが特徴のパッシブハウス(予定)です。また、西東京市で新しい家づくりが始まっています。鳥さん(オウムとインコ)のためのお部屋のある、かなり個性的なお家です(最近、個性的な家しか建てていない気もしますが)。
目次
1.三鷹市・S様邸(三鷹パッシブハウス(予定))
2.調布市・K様邸(スキップフロアと大きな土間のある家)
3.練馬区・Y様邸(北欧テイストの2階建ての家)
4.西東京市・I様邸(鳥さん部屋と円形洗面室のある家)
◎三鷹市・S様邸(三鷹パッシブハウス(予定)
では早速、S様邸の完成写真を見ていきましょう。
現代的な和風デザインのS様邸の外観。窓の外側に付けた木製の横格子と、それらを収納する戸袋の鏡板(かがみいた)が外観上の大きな特徴です。横格子も鏡板も無垢材を使って造作しています。
外壁は枯草色のガルデ(外壁用塗り壁材)に粗めの骨材を入れて仕上げています。手前のフェンスは、先月のブログで製作の過程を紹介した、現代風にアレンジした大和塀(やまとべい)です。
玄関ホール。S様邸の床材には、無節(むぶし/節のない)の杉の無垢材を使っています。内壁には薩摩中霧島壁という火山灰を主成分にした天然素材の塗り壁材を採用。薩摩中霧島壁には10色以上のカラーバリエーションがあり、白系の色を選ばれるお客さまが多いのですが、S様が選ばれたのは砂色。そのおかげで、どこか小さな美術館みたいな雰囲気のある空間になっています。
吹き抜けのあるLDK。南側の窓の外側に付けた木製横格子を通り抜けて、明るい日差しが室内に射し込んできます。横格子は、意匠的な役割も大きいのですが、パッシブハウスの日射遮蔽の要件を満たすという重要な役割も担っています。
障子を閉めてみました。障子は知る人ぞ知る「吉村障子」です。吉村障子とは、建築家の故吉村順三氏が考案したデザインの障子で、特徴は障子の框(かまち/外枠)と組子(くみこ/内部の木材)の幅が同じなところ。きれいに並べると複数の障子が境目のない一枚の大きな障子に見えるようになっていて、スタイリッシュでスッキリとした空間を実現できます。たまに、吉村障子という会社があって、その会社が製造している障子だと誤解されている方がいるのですが、そうではなく、作っているのは小野寺工務店の建具屋です。
LDKの東側を撮影した写真。東側の壁にはスタディカウンターを造り付けています。
キッチンの筐体は、無塗装のシナ合板で造作しています。背面はマガジンラックとして使えるように少し凹ませています(コンセントも仕込んでいます)。S様邸では、シナ合板を用いた造作建具や収納を随所に取り入れ、統一感のある空間を実現しています。
キッチン横の小上がりの和室。左側の壁から3枚の吉村障子を、キッチン側の壁からシナ合板の引き戸をするすると引き出すことで、間仕切れるようになっています。
吊り押入れの下には間接照明を入れています。ちょっとしたギャラリーのようなスペースです。
LDKの西側。こちらにもスタディカウンターがあります。落ち着いて読書できるスペースがあちこちにあって、本好きにはたまらないお家かもしれません。観葉植物を置いてある間仕切り壁の向こう側に、洗面室や浴室などの水回りをまとめています。
建物の西側に配置した広くてスッキリした洗面室(とトイレ)。洗面台は造作しています。
薩摩中霧島壁で塗装した階段を上がって2階へ行きましょう。ザラザラした壁に照明の光が当たって陰影が浮き上がって見えます。地下にある隠れ家風レストランの入口のような、ステキな雰囲気の階段です。
階段を上がったホールに造作した収納棚と本棚。正面の白いドアは防音ドアで、その向こう側はピアノルーム兼ミニシアターになっています。
2階吹き抜けスペース。木製の手すりは、すっきり見えるように、左右の塗り壁から突き出るような意匠デザインにしています。
上の写真の右側にあるご主人の書斎。テーブル板の下に棚板を入れて、間に書類などを収納できるようにしています。テーブルの真上にある四角いカバーは、全館冷暖房システムの吹き出し口です。
主寝室。写真の右側にオープンタイプのウォークインクローゼットがあります。
子ども部屋は、将来2部屋に仕切れるようにドアを2つ付けています。
防音を施したピアノルーム兼ミニシアター。赤いソファは、先月のブログでも書きましたが、ソファの土台(木枠)を当社が作り、バネやウレタンの入ったソファ本体をソファ屋さんが作った分業制造作ソファです。座り心地バツグンのステキなソファです。
以上、S様邸の完成写真でした。「施工事例集」ではこちらで紹介した写真以外にもたくさんの写真を紹介しています。ぜひご覧ください。
[Special Thanks]
S様邸の家づくりにあたり、埼玉県の建築会社「PASSIVESCAPE Architbuild」の皆さまに感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
家づくりの最初の段階で、S様から「家のデザインはPASSIVESCAPE Architbuildさんが建てた志木パッシブハウスのようにしたい」というご要望をいただき、そのため外観デザインなど多くの点で参考にさせていただきました。また、S様のご希望をできるだけ具体的に理解するため、志木パッシブハウスの見学をお願いしたところ、快くご承諾いただきました。
改めて、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
◎調布市・K様邸(スキップフロアと大きな土間のある家)
滞りなく確実に一歩一歩、完成に向けて工事が進むK様邸。今月は、外壁工事の様子からレポートしていきます。
下の写真は、2人がかりで玄関の軒天に無垢の杉板を貼る職人さん。手前に写っているグレーに塗装されたスチール製のフレームは、以前ほんの少しだけ紹介した特注の玄関ドアです。
軒天に続いて、壁にも無垢の杉板を貼っていきます。杉板には、事前に木材保護塗料のキシラデコールをしっかり塗っています。
杉板貼りが終わる頃、現場に焼杉が搬入されてきました。これもS様邸の外壁材として使用します。ちなみにS様邸で使用する焼杉は、広島県の中本造林さんの焼杉です。
焼杉の施工が始まりました。中本造林さんの焼杉には、クリア塗装タイプなど複数の種類があるのですが、S様邸に使うのは無塗装の素焼きタイプです。手はもちろん、服も大工道具も、あっという間に煤(すす)で真っ黒になります。
焼杉の表面をアップで撮った写真。焼かれて炭化した木材は、驚くべき耐久性を持っています。青森県に三内丸山遺跡という縄文時代の遺跡があるのですが、そこからは、縄文人によって意図的に焼かれた柱の根元部分が、原型をとどめた状態で発掘されています。もしかするとS様邸の外壁も、数千年後に発掘されて未来の日本人をビックリさせるかもしれません。
焼杉の施工の様子をチェックする当社社長(黄色い矢印)。S様邸は、普段使わない材料を使うことが多く、また難易度の高い造作も多いので、社長は毎日のように現場に来ています。
屋内工事の様子も少し書いておきます。
下の写真に写っているドア枠ですが、一般的なドア枠と比べて、枠の厚みが薄いと思いませんか?ご自宅のドア枠を見ていただくとわかりやすいと思うのですが、一般的なドア枠は2.5センチほどの厚みがあるのにたいして、S様邸のドア枠は、「スッキリしたデザインにしたい」というS様のご要望により、厚さ6ミリで仕上げています。
とはいえ、厚さ6ミリの板でドア枠を作るのは、強度や耐久性の面で無理があるため、下の図のように、通常より厚みのあるドア枠を凸型に加工して、全体の9割ほどを壁の中に隠すことで、S様のご要望を実現しています。
下の写真の黄色い枠の部分にドア枠の本体が隠されているというわけです。
同様の工夫は巾木(黄色い矢印)にも施しています。ドア枠と同じく厚さ6ミリのスッキリしたデザインにしたいというご要望を受け、加工した巾木の本体部分を壁の中に隠すことで、こちらも実現しています。
◎練馬区・Y様邸(北欧テイストの2階建ての家)
前回のレポートから1か月が経ち、無事に基礎が完成しました。黄色い矢印で示している黒い板状のものは、断熱材を保護するための「蟻返し板金(※)」です。この板金の下には基礎と一体化した分厚い断熱材があり、地面や地表からの冷気の侵入を遮断するとともに、建物からの熱損失をしっかり抑えてくれます。
(※)断熱材を保護する以外の役割もありますが、長くなるので今回は省きます。
基礎ができあがると、次は上棟です。現場に土台用の木材が搬入され、同時に足場の組み立ても始まりました。来月号では上棟の様子を紹介できると思います。
◎西東京市・I様邸(鳥さん部屋と円形洗面室のある家)
調布市で新しくI様邸の家づくりが始まりました。なんと今回は、鳥さん(オウム2羽とインコ2羽)用のお部屋がある、種族の垣根を超えた二世帯住宅です(ちょっと表現に無理がありますね)。
さてさて。下の写真は、昨年10月に撮ったI様邸の敷地の様子です。I様邸の敷地は開発分譲地の一画で、黒い車の手前の土地がI様邸の建築予定地です。この日は設計作業を進めるにあたり、敷地の陽当たり具合を調べにやってきたのです。
昔と違って今は便利なツールがあり、下の画面はSunSeekerというスマホアプリを使って調べたI様邸の敷地の、季節ごとの太陽の動きです。SunSeekerを起動させた状態で、調べたい方角にスマホを向けるだけで、その方角の四季それぞれの陽当たり具合が把握できます。ちなみに赤線が夏至の日、緑線が春分と秋分の日、水色の線が冬至の日、黄線がその日の太陽の動きを表しています。
そして1年が経ち、ようやく「これだ!」という設計プランに辿り着き、いよいよ家づくりが始まるというわけです。
下の写真が、現在のI様邸の敷地の様子です。周囲にはいつのまにか住宅が立ち並び、そして、長い間放っておいたせいで雑草伸び放題になっていました。
というわけで、10月某日、当社スタッフのMとNの両名が草刈りに行ってきました。季節外れの暑さの中、本当におつかれさまでした!おかげで、敷地は見違えるようにきれいになりました。
草刈り後、お清め式を行いました。下の写真は、敷地の四隅にお清めのお酒をまく古川大工です。1年以上の設計期間を経て、いよいよ家づくりが始まります!頑張るぞ!オー!
(続く)