「超急勾配の屋根と出窓‐難工事が続くM様邸」と「やわらかな日差しに癒される!北側採光の家づくり」の巻/2023年11月号
今回の月刊小野寺工務店は、できあがってみると当たり前のように見えるけれど、考えたり作ったりするのはじつはとっても大変!という造作や工事のいくつかを紹介したいと思います。
目次
1.調布市・K様邸(ビルトインガレージの家)
2.調布市・M様邸(L字型の土間リビングのある家)
3.国分寺市・S様邸(やさしい日差しが入る北側採光の家)
◎調布市・K様邸(ビルトインガレージの家)
今月の月刊小野寺工務店は、鈴川大工の奮闘が続く、K様邸の大工工事の様子からレポートを始めたいと思います。
下の写真は2階LDKの大工工事を粛々と進める鈴川大工。体力的に大変な勾配天井の板張りを終えたところです。勾配天井の板張りは、ヨコ張りにするのはそれほど大変ではないのですが、K様邸のようにタテ方向に張るのは、板を固定しながら斜めに登っていく必要があるため、労力的に5倍ほどの違いがあります。若い大工でも、途中でヘロヘロになって音を上げる作業ですが、鈴川大工は大変だ~と言いながらも、笑顔で作っていきます。頼りになる男です。
大工仕事の話をもうひとつ。黄色い矢印のはしご状の木枠は、間接照明用の木枠です。一枚板をL字アングルで取り付けると作業は一瞬で終わるのですが、その取り付け方だと、いつのまにか板が自重で微妙に傾いてくることが多いのです。そのわずかな傾きが嫌なので、はしご状に木を組み、重量を大幅に減らし、かつ壁にがっつり固定しています。家が完成してしまうと、中がどうなっているかわからないのですが、見えないところに小さな工夫をしているということを、少し書かせていただきました。
ビルトインガレージも着々とできあがってきています。梁表しの天井のように見えますが、このあとケイカル板を貼っていきます。壁が灰色なのは、断熱材のセルロースファイバーがむき出しになっているからです(この後石膏ボードを貼ります)。
コーラを片手に休憩中の鈴川大工。頭をフル回転させる複雑な作業が続くせいか、いつもより糖分の摂取が多いような気がします。(笑)
下の写真はいったい何でしょう?先月号で、ガレージ内はK様がご自分でDIYされるので、内装は下地材の状態でお引き渡しするという話を書きましたが、もうひとつ、天井から棚を吊り下げるためのボルトを出しておいてほしい、という要望もいただいているのです。下の写真が天井裏に仕込んだそのボルトです。ナットを下から強く締めた際に、ボルト自体がクルクル回るとダメなので、ちょっとした工夫をしてボルトをガッチリ固定しています。
ビルトインガレージの天井にケイカル板を貼る鈴川大工。黄色い枠の中、天井からボルトが突き出ているのがわかりますでしょうか?
K様から差し入れていただいたお菓子を食べる鈴川大工と電気工事屋さん。エネルギー補給中です。
◎調布市・M様邸(L字型の土間リビングのある家)
下の写真は上棟翌日のM様邸。建物の下から順に耐力面材(ダイライト)を貼っているところです。このまますんなりと家づくりが進んでいくように見えるM様邸ですが、この後、いくつかの難工事が小野寺工務店を待ち受けています。(汗)
難工事その1は、下の写真の黄色い枠のところに作る出窓。道路に面したこのコーナーに出窓を作るというのが、M様の当初からの強いご希望なのです。
出窓を作るのがどうして難工事なのかというと、出窓を作るだけなら簡単なのですが、家全体の断熱性能を落とさずに出窓を作るのが大変なのです。冬に街を歩くと結露で曇った出窓をよく見かけますが、小野寺工務店の家に限っては結露はもちろん、出窓のせいでわずかでも住宅性能が落ちるなんてことはあってはならないのです。
高い基準の断熱性能を確保するため、出窓部分に採用する窓はAPW430というトリプルガラスの樹脂窓です。その窓を2つ直角に組み合わせて入れるのですが、この窓、トリプルガラスというだけあって、分厚いガラスが3枚入っていてすごく重いのです。その重量をガッチリ支える構造が下の写真です。窓を支える木枠のことを窓台というのですが、小野寺式ヘビー級出窓用窓台です。
時間を少し早送りして、こちらが窓を入れて、石膏ボードで壁の中の構造部分を覆い隠した状態の出窓です。壁の中に組み木パズルのような窓台が入っているとは、想像できないと思います。
難工事その2は、黄色い枠の場所に作る超急勾配の屋根と、赤枠のところに開ける2つのドーマー窓です。
ちなみにどれぐらい超急勾配かというと、下の写真ぐらいです。これぐらい勾配がきついと断熱性能や耐震性能的に屋根として作るのは無理があるので、先に垂直の壁を作って、その上に屋根を被せるような作り方になります。
壁の上に屋根を支える垂木を組んでいきます(黄色の枠内)。赤い矢印の先にある庇は最後に切り落とします。
急勾配の屋根を突き破るように設置するドーマー窓。雪深い北欧の山小屋なんかでたまに見るデザインですが、それを調布で実現しようというM様。そういう遊び心、大好きです!
黄色い塗料は防水気密塗料のゴールドコート。複雑な構造なのでいつもより厚めに念には念を入れて、たっぷり塗っておきます。
ゴールドコートの塗布が終わり、その上から付加断熱(外断熱)用の断熱材を貼っていきます。下の写真の白い板が断熱材のEPSボードです。これは南極の昭和基地にも使われている断熱材です。
付加断熱(外断熱)担当の職人さん。EPSボードに専用の接着剤を塗っているところです。
断熱材を貼り終えたところから屋根の下地となる合板を貼っていきます。ようやく難工事の終わりが見えてきました。
急勾配の屋根づくりと同時進行で、屋内では充填断熱工事が着々と進んでいます。下の写真は充填断熱材のセルロースファイバーを壁の中に吹き付ける職人さんです。
先ほど、建物の外側に断熱材(EPSボード)を貼っている写真を紹介しましたが、建物の外と内の両側に断熱材を入れるのが、小野寺工務店の断熱施工の特徴です。
(ダブル断熱という言い方をしている建築会社もありますが、当社では充填断熱+付加断熱という言い方をしています。)
セルロースファイバーの施工方法にはいくつかの種類があるのですが、当社ではウォータースプレー方式を採用しています。これはあらかじめ微量の糊成分をセルロースファイバーに混ぜておき、霧状の水といっしょに吹き付けることで壁の中に固着させるというやり方です。下の写真はセルロースファイバーを壁に吹き付けた状態。この後、余分なセルロースファイバーをそぎ落としていきます。
壁からはみ出したセルロースファイバーをそぎ落とし、充填断熱工事が完了しました。
◎国分寺市・S様邸(やさしい日差しが入る北側採光の家)
国分寺市で新しくS様邸の家づくりが始まりました。北側道路の特徴を最大限に活かした柔らかな日差しが入る北側採光の家です。北側からの反射光を利用して明るい家を作るため、2階吹き抜けリビングを採用。また小野寺工務店では少数派の白い内装を基調とした住宅です。
こちらがS様邸の建築予定地。奥が南、手前が北です。
いつものように基礎断熱仕様の基礎工事が始まりました。写真中央の白いボードと手前の薄緑のボードが基礎用の断熱材です。
基礎の配筋を組む前に、基礎を入れるお弁当箱のように底面と側面に断熱材を設置していきます。
つぎに、断熱材の上に配筋を組んでいきます。
第三者機関による配筋検査の様子。無事合格し、このあとコンクリートの打設を行うのですが、それは次回のブログで紹介したいと思います。
(続く)