「パッシブハウス認定を目指す家づくりが始まりました!」と「パテ処理中の家の中は絵本のような世界?!」の巻/2023年2月号
西東京市でパッシブハウス認定を目指す家づくりが始まりました。パッシブハウス・ジャパンの会員となって約9年、ようやくパッシブハウスを建てたいというお客様と、パッシブハウスの要件を満たす南側が開けた土地に巡り合うことができました(←これが都内ではなかなか難しかったのです)。
「満を持して」という言葉があります。辞書で調べると、「充分な用意をして待っていた機会が訪れる」とありました。パッシブハウスについては、まさにその言葉通りの心境です。
目次
1.杉並区・K様邸(変形地に建てる完全分離の二世帯住宅)
2.三鷹市・S様邸(シンプルな2階リビングの家)
3.西東京市・T様邸(パッシブハウス認定を目指す家)
◎杉並区・K様邸(変形地に建てる完全分離の二世帯住宅)
前回、付加断熱(外断熱)工事の前半戦をレポートしたK様邸。今回は後半戦のレポートから始めたいと思います。
下の写真の白いボードはEPSボード。付加断熱用の断熱材です。グレーのペンキのようなものはベースコートという接着剤兼保護塗料です。ベースコートを使って外壁全体に隙間なくEPSボードを貼り付けていきます。
EPSボードを貼り終えたら、その上から補強用のメッシュシートといっしょにベースコートを塗っていきます。下の写真の男性は左官職人の田中さん。仕事は丁寧、人柄は朗らか、めちゃいい人です。
ベースコートの上塗りを終えた外壁。このあと、この上からガルデという外壁仕上げ材を塗っていくのですが、その様子は来月号で紹介します。(もったいぶっているようですいません。塗って乾かして、塗って乾かしてを繰り返しているとそれなりに時間がかかるのです)
外壁工事は途中ですが、屋根工事は終わっていて、二世帯分の太陽光発電パネルの設置も完了しています。遠くに新宿の街並みが見えます。
家の中はどんな具合かというと、壁紙(クロス)工事が進行中です。下の写真の男性はパテ処理中のクロス職人さん。石膏ボードのつなぎ目やビスの頭を丁寧にパテで埋めていきます。
丁寧なパテ処理がなめらかで美しい壁紙の基本。徹底的に凸凹をなくしていきます。(パテ処理中の家の中は絵本の中のような少し幻想的な雰囲気になります)
トイレの中もパテ処理完了。角に設置した三角形の台座は小さな造作収納です。壁紙を貼ってから、扉を付けて仕上げていきます。
◎三鷹市・S様邸(シンプルな2階リビングの家)
前回、上棟の様子を紹介したS様邸。今回はS様邸の工事を題材に小野寺工務店の気密施工の一端を紹介したいと思います。
上棟から数日後、現場に防水気密塗料「ゴールドコート」が到着しました。ゴールドコートは、塗る前はドロッとした液体ですが、乾くとゴムのような伸縮性のある塗膜に変化して、強力な気密性能を発揮します(下の写真の黄色い容器の中にゴールドコートが入っています)。
最初に耐力面材の継ぎ目にゴールドコートを塗っていきます。この時、ジョイントテープという補強材といっしょに塗り込んでいきます。
その後、外壁全体に二度塗りを行います。下の写真は二度塗り目が完了した際の写真です。これで家全体がすっぽりとウエットスーツのようなゴム素材で包み込まれました。
ものすごく分厚いダウンジャケットを着ていても、前のファスナーを開けたままだとスースー風が通ってまったく暖かくないように、超高性能な断熱材をどれだけ分厚く施工しても隙間だらけの家ではまったく意味がありません。快適な住宅を作るためには断熱性能と同じぐらい気密性能が大切です。
気密施工の話はもう少しだけ続きます。下の写真は電線の引き込み箇所です。こういったところが気密上の弱点になるので…
シーリング剤で壁と金具の隙間を埋め…
その上からジョイントテープを貼り、さらにその上からゴールドコートを塗っておきます。これでわずかな空気のモレもなくなります。
家の中ではセルロースファイバーによる充填断熱工事が始まっています。充填断熱については前月号のK様邸の工事レポートで詳しく説明しましたので、今月は割愛します(読み逃した方はぜひご覧ください)
充填断熱工事完了の写真(1)。壁の中にびっしりと吹き付けたセルロースファイバー。
充填断熱工事完了の写真(2)。セルロースファイバーは断熱性能が高いのはもちろん、調湿性能と吸音性能も高いのが特徴です。そのためセルロースファイバーを吹き付けた後、現場は少し静かになります。
断熱工事が終わるころ、気密測定を行います。小野寺工務店では全棟で気密測定を行っています。
◎西東京市・T様邸(パッシブハウス認定を目指す家)
西東京市でパッシブハウス認定を目指すT様邸の家づくりが始まりました。
パッシブハウスとは、ドイツのパッシブハウス研究所が提唱する超省エネ仕様の住宅のことで、平たく言うと、断熱性能がめちゃくちゃ高く、気密性能もめちゃくちゃ高く、その上で太陽の日射を最大限に活用することで、冷暖房器具をほんのわずか使うだけで一年中快適な暮らしができる家のことです。
その住宅性能は、関東地区で建てた場合、冬の間も特別寒い日でなければ、暮らす人の体温と、料理や入浴、ドライヤーなどで使う熱量だけで快適な室温を維持できると言われています。
小野寺工務店は2014年からパッシブハウス・ジャパンの会員として活動していて、パッシブハウスを建てたい!とずーっと思っていたのですが、調布市や三鷹市にはパッシブハウスの要件を満たす南面がドドーンと大きく開けた土地が少ないこともあり(あっても超高額で)、これまで建てる機会がありませんでした。パッシブハウス・ジャパンでともに活動する地方の家づくり仲間がパッシブハウスの施工実績を少しずつ積み上げていく様子を横目で見ながら、悶々としていたのです。
そんな時に「パッシブハウスを建てたい。パッシブハウスの条件に合う土地探しから相談したい!」というT様が颯爽とあらわれたのです。気合が入らないわけがありません!というわけで、前置きが長くなりましたが、T様邸の家づくりレポートを始めたいと思います。
「90秒でわかるパッシブハウス」
パッシブハウスについてはこちらを見ていただくとわかりやすいと思います。
こちらがT様邸の建築予定地です(これから古家を解体します)。パッシブハウスが要求する冬の日射取得と夏の日射遮蔽を確保するには、南側の間口が10メートル以上あり、しかも向かい側の建物まで最低でも10メートル以上離れている必要があります。そんな土地を探し求めてT様といっしょに武蔵野エリアの売土地を何ヵ所も見て回り、ようやく巡りあえたのがこの土地です。
東南の角地で前面道路も広いのですが、これでもパッシブハウスを建てるにはギリギリでした。向かい側の建物があと少しでも高かったらアウトでした。
解体作業が始まりました。
解体が終わりました。
何年も前に作っていた「パッシブハウス建築地」の看板。ずっと倉庫の片隅に置いてありましたが、ようやく陽の目を見ることができました。
工事を始める前に、敷地の四隅にお清めのお米とお酒と塩をお供えします。最近は地鎮祭を行わないお客様が増えてきました。地鎮祭を行わないときは、このようなお清め式を簡単ではありますが、行うようにしています。
工事の無事を祈りつつ…。
お清め式が終わるといよいよ家づくりが始まります。下の写真は「遣り方」を作っている基礎工事の職人さんです。遣り方は建物の壁や柱の配置や基礎高の基準となる、非常に重要な仮設物です。
遣り方ができあがりました。
基礎工事が始まりました。パッシブハウス仕様の基礎工事の様子は次回詳しくレポートしたいと思います。
(続く)