「気密性能は施工精度が命」と「紙クロスは下地のパテ処理が大事」と「家は数十年先を考えて建てるもの」の巻/2022年5月号
この春、小野寺工務店に新しく入社した3名のスタッフ。いずれこの月刊小野寺工務店に登場するかも・・・と先月書きましたが、早速そのうちのひとり、施工管理の畑中君が今回登場しています。勉強熱心なナイスガイです。
目次
1.府中市・N様邸(セカンドリビングのある注文住宅)
2.調布市・NA様邸(ドーマーと土間のある注文住宅)
◎府中市・N様邸(セカンドリビングのある注文住宅)
完成に向けて、急ピッチかつ丁寧な工事が進むN様邸。屋内では壁紙(クロス)工事など、家づくりの最終工程がはじまっています。
下の写真は、壁紙工事のために内部足場を組んだリビングの吹き抜けスペースです。壁の縞々模様は、壁紙を貼るための前処理としてパテを塗った跡です。下地材のつなぎ目やビスの頭の凸凹をパテで均していくのですが、この工程の精度が仕上がりに大きく影響します。
壁紙工事の職人さんはテキパキとパテ処理を進めていきますが、足場の幅は約40センチ。頭上を見上げながらの作業なので、横で見ていると少しハラハラします。
続いて吹き抜け1階部分の写真です。写真中央、壁から突き出ている細長い木枠の中にはダイニングテーブルを照らすためのライティングレールが組み込まれています。この木枠、間取り図ではマッチ棒のようにスッと簡単な線で描かれているだけですが、実際に作る際は、どのようにして壁に固定するか、木枠の材料は何を使うか、どの程度の強度を持たせるか、補強材の角度は?など、いろんなことを考えに考えて作ります。
続いてパテだらけの2階主寝室の写真です。断熱材に調湿性能の高いセルロースファイバー(アップルゲート)を使う以上、透湿性・通気性の低いビニールクロスを壁に貼るのはもったいないので、エコフリースなどの紙製クロスをおすすめするようにしています。ビニールクロスと違って、紙のクロスは薄く、下地の凸凹の影響をモロに受けるので、パテ処理は念入りに施す必要があります。
キッチン背面の造作カウンターもできあがりつつあります。奥行きの異なる収納棚はN様からのリクエストです。
こちらは2階セカンドリビングの吹き抜けに面した開口部です。上下に溝を掘っていますが、建て替え前の家で使用していた障子が3枚、ここに入ります。障子はすべて戸袋に収納できるようになっています。吹き抜けの先に、壁面造作書棚が見えています。
2階ホールの壁面造作書棚。奥行が浅いため収納できるのは文庫本(ギリギリ漫画の本)に限られますが、冊数はかなり入ります。
階段下のデッドスペースを活用した、右から、床下エアコン&ルンバの基地スペース、スティック式掃除機の収納スペース、パソコン用のデスクスペースです。
上の写真の一番右側、床下エアコン&ルンバの基地スペースです。左の壁の2つのコンセントは、1つはエアコン用で、もうひとつはルンバ用です。奥の穴から黒いコードが伸びていますが、これはエアコンの有線リモコンの配線です。
床下エアコンの場合、エアコン本体ではなく、リモコンの方に室温を感知する温度センサーが付いている必要があります(狭い空間に設置するため、エアコン本体に付いているとすぐに止まってしまいます)。一般的な無線タイプのリモコンで温度センサー付きの機種はいまのところないので、有線タイプのリモコンになってしまうのです。とはいえ床下エアコンはタイマー運転することがほとんどなので、実用上はほとんど問題ありません。
壁紙の施工が始まりました。真剣な表情でエコフリースの継ぎ目を整える職人さん。
壁紙を貼り終えた2階トイレスペース。紙製のクロスはしっとりとした質感に仕上がるのが特徴です。
2階の洋室。光と影といいますか、陰影がいいかんじだと思いませんか。
キッチン背面カウンターの造作も進んでいます。名古屋モザイクの落ち着いたブルーグレーのタイルが入りました。N様邸の完成まであと少しです。
[おまけの写真]
N様邸の階段の手すりを作る鈴川大工。N様から階段の手すりを八角形にしたいというリクエストがあり、それなら壁と手すりの接続部分も八角形にしようということで、鑿(のみ)を使って細かな造作をしているところです。こういう細かな造作が大好きな男です。
◎調布市・NA様邸(ドーマーと土間のある注文住宅)
前回、上棟の様子を紹介したNA様邸。今回は、上棟後の防蟻処理→電気打ち合わせ→外壁の気密施工についてレポートしたいと思います。
まずは防蟻処理のレポートから。下の写真はNA様邸の耐力面材(外壁下地)の屋外側に防蟻剤をたっぷり塗布したところです。基礎の上端から規定の高さまでしっかり塗り込んでいます。
屋内側もこの通り。こちらも規定の高さまでしっかり塗り込んでいきます。小野寺工務店ではボラケアというホウ酸塩を主成分とした防蟻剤を使用しています。ホウ酸塩は自然界に普通に存在する物質で、人やワンちゃん、猫ちゃんが口に入れても無害ですが、シロアリの体内に入ると、消化系の代謝を阻害し、彼らはすぐに死んでしまいます。ボラケアは木材に浸透することで半永久的に効果が持続するので、しっかりたっぷり塗布することが重要です。
続いて上棟打ち合わせについてのレポートです。上棟後、外壁下地が貼り終わるタイミングで、建築現場にお施主様に来ていただき、主に電気工事の打ち合わせを行います(小野寺工務店では上棟打ち合わせという呼び方にしていますが、建築会社によって、現場打ち合わせとか、現地確認とか、呼び名はさまざまです)。上棟打ち合わせでは、コンセントの位置や数、スイッチの位置、照明の位置などについてひとつひとつ順に確認していきます。
図面上で何カ月もかけて検討を重ねてきたコンセントの位置やスイッチの位置ですが、実際に実物の家の中で確認を進めていくと必ずといっていいほど変更が発生します。特にコンセントの数と位置は、住み始めてから後悔するポイントの殿堂入り級の第一位ですので、家具と電気製品をどのあたりに置くか、しっかりイメージしながら確認してもらうようにしています。
上棟打ち合わせのひとコマ。真剣な表情のNA様の奥様。確認作業がスムーズに進むように、あらかじめスイッチの位置やコンセントの位置、各種リモコンの位置に紙を貼ったりして、イメージがつかみやすいようにしています。
上棟打ち合わせのひとコマパート2。屋根裏の使い勝手について、真剣に話し合うNA様ご夫妻と小野寺工務店のスタッフ。左奥にドーマー部分の窓が見えています。
上棟打ち合わせのひとコマパート3。といっても、この写真は上棟打ち合わせが無事に終わった夜の写真。上棟打ち合わせで変更になった箇所を早速変更している電気工事の職人さんです。電気の配線工事が終わり次第、断熱工事の準備が始まります。
最後は外壁の気密施工についてのレポートです。わざわざ書くまでもないことですが、断熱性能と気密性能は、同じぐらい大切です。どれだけ高性能な断熱材を使用していても、隙間だらけの家ではまったく意味がありません。
断熱性能については、お客様から、「どういった断熱材を使っていますか?」といった質問をよくいただきますが、気密性能について「どのような気密施工を行っていますか?」といった質問を受けることはほとんどありません。断熱性能は使用する断熱材の種類によって、ある程度測れますが、気密性能はいかに細かくかつ丁寧に施工をするかという施工精度の問題なので、なかなか質問するのも説明するのも難しいテーマです。長々と書いてしまいましたが、小野寺工務店はものすごく高い精度で気密施工を行っています。(証拠を出せ!と言われてしまうと困るのですが、全棟で気密測定を行っているのでその数字を出すことは可能です。)
前置きが長くなってしまいました。NA様邸の施工レポートに戻ります。下の写真は、下地材と下地材の継ぎ目と、下地材と窓サッシの継ぎ目部分の隙間をなくすための作業の様子です。
ゴールドコートという、乾くとゴムのようになる塗膜材を下地材の継ぎ目に塗り、その上からジョイントテープというこれまたゴムのように伸び縮みするテープを貼り、さらにその上からもう一度ゴールドコートを塗り、徹底的に隙間を埋めていきます(ちなみにこれらの作業は下準備です。最終的に建物全部をゴムで包み込むようにゴールドコートを建物全体に塗っていきます)。
配管が外に出る場所もジョイントテープを重ね貼りして、念入りにゴールドコートを塗り込んでいきます。
数日後、建物全体にゴールドコートの一度塗りを行いました。ゴールドコートは二度塗りが基本なので、完全に乾くのを待ってからもう一度塗ります。
[おまけの写真その1]
下の写真は、将来的な間取り変更に備えて、子供室の壁にあらかじめ開けたエアコン用の配管です。写真に写っているメモ書きにあるように、この後断熱材を充填してボードでふさぎます。
ひと昔前の建売住宅と違って、しっかり建てた注文住宅は長持ちします。小さな子どもたちは独立し、元気に階段を上り下りしている新婚のご夫婦もいずれは年を取ります。家の間取りは未来の家族のカタチも想定してデザインする必要があります。
[おまけの写真その2]
下の写真の男性は、この4月に小野寺工務店に入社した畑中君です。以前は住宅設備の関連会社に勤めていたのですが、縁あって小野寺工務店の仲間になりました。当社では施工管理の仕事をしています。
一日の工事が終わったNA様の現場で明日以降の段取りを黙々と確認する畑中君。頼もしい男です。
(続く)