「N様邸の付加断熱(外断熱)工事」と「復活した背比べの大黒柱」と「6.7寸屋根には屋根足場が必要」の巻/2022年4月号
小野寺工務店では、4月と5月に合計3名のスタッフを増員する予定です。インテリアコーディネーター兼お客様担当のTさん、設計兼お客様担当のKさん、施工管理のHさんです。いずれこの月刊小野寺工務店にも登場すると思います。その際は、よろしくお願いいたします。
現在の小野寺工務店の混み具合ですが、建築中2邸、設計が終わり着工待ち1邸、設計中4邸という状態で、いまいま家づくりのご依頼をいただいた場合、設計スタートまで少々お待ちいただく状況です。新しいスタッフが一刻も早く小野寺工務店の仕事に慣れ、お客様をお待たせする時間が少しでも短縮できることを願っています。
目次
1.府中市・N様邸(セカンドリビングのある注文住宅)
2.調布市・NA様邸(ドーマーと土間のある注文住宅)
◎府中市・N様邸(セカンドリビングのある注文住宅)
既製品の建具をあまり使わないこともあり、他の建築会社に比べて、造作工事の多い小野寺工務店の家づくりですが、N様邸はそんな小野寺工務店の家づくりの中でも、おそらくここ数年でもっとも造作工事の多い家づくりだと思います。
はてしない造作工事の連続に、熟練大工もついつい弱音を吐く日々でしたが、目の前の仕事をひたすらこなすこと数カ月、なんとか終わりの見える状態になってきました。
下の写真は1階リビングと小上がりの和室を仕切る障子の敷居です。以前の家で使われていた障子を再利用するため、障子の大きさを採寸して、そのサイズに合わせて溝堀りを施しています。
こちらは同じ場所の鴨居です。こちらも丁寧に溝掘りを行っています。写真中央の濃い色の柱は、背比べの跡が残る建て替え前の家の大黒柱です。新しい家では和室の化粧柱として家族の成長を見守ってくれます。
続いて2階の階段ホールの写真です。手前は造作したスタディカウンター。奥に見える部屋はセカンドリビングです。吹き抜けに面した開口部には、ここにも前の家で使っていた障子が入るので、敷居と鴨居を取り付けています。
家の外では、付加断熱(外断熱)工事が着々と進んでいます。下の写真の白いボードが、付加断熱用の断熱材(EPSボード)です。下から上へパズルのように貼っていきます。EPSボードは南極の昭和基地でも採用されている強力な断熱材です。
EPSボードにベースコートという下塗り材(接着剤)を塗る左官職人さん。壁内通気を考慮して縦溝ができるように塗っていきます。
上から見たEPSボード。小野寺工務店の標準仕様は50ミリ厚ですが、N様邸ではより高い断熱性能を目指して、75ミリ厚のEPSボードを使用しています。写真中央の木片は物干し金具を取り付けるための補強下地です。EPSボードは発泡スチロールのような素材で、釘やネジの保持力がほとんどありません。そのため、物干し金具や換気用のガラリなどを取り付ける場所にはあらかじめこのように補強をする必要があります。
補強下地はあらかじめ決めた場所に、正確に設置します。強力な断熱性能を実現するEPSボードですが、難点を1つあげると、壁になにかを取り付ける場合はあらかじめ補強下地を設置する必要があるため、後々取り付け位置を変更したりできないことだと思います。(物干し金具や屋外コンセントの位置などは、事前に念入りに打ち合わせ行います)
補強用の木片にもきちんとウェザーシールを塗っておきます。ウェザーシールは乾くとゴムのようになる透湿防水塗膜です。わずかな隙間も見逃さない施工が、高い気密性能の秘密です。
[おまけの写真]
階段下に設けた、床下エアコン用のスペース。最近は床下エアコンを採用されるお客様が増えてきて、標準仕様のようになってきています。
◎調布市・NA様邸(ドーマーと土間のある注文住宅)
前回、基礎断熱(基礎下断熱)を採用した基礎ができあがる様子を紹介したNA様邸。今回は上棟の様子を中心にレポートしたいと思います。
上棟に先立ち、足場屋さんが足場を組んでいきます。
土台となる木材に防蟻剤を塗っていきます。小野寺工務店では「ボラケア」というホウ酸塩を利用した防蟻剤を採用しています。ホウ酸塩は自然界に普通に存在する物質で、人や植物にとっては必要不可欠な栄養素ですが、シロアリが食べると胃の中の酵素が阻害されて死んでしまいます。
防蟻処理は上棟後に本格的に行います。上棟前のこのタイミングでは、上棟してからでは塗れない土台の下側や土台同士の接合面に処理を施します。(メーカーさんからは塗らなくても大丈夫と言われているのですが、ねんのため塗るようにしています)
土台組みが終わりました。一般的な床下断熱を採用している建築会社の場合、土台を組んだ後にできる正方形のマス目の中に断熱材をはめ込んでいきますが、基礎断熱を採用している小野寺工務店の場合はすでに基礎の下と基礎の外周部に断熱材を仕込んでいるので、このマス目の中には何も入れません。
大きな床下空間を断熱材に守られた「家の中」とすることで、基礎コンクリートを蓄熱層として利用し、また床下エアコンを活用することもできるのです。
上棟の様子その1。2階の梁と桁を組んでいるところです。すぐ近くの建物の2階から撮影しました。
上棟の様子その2。これは下から撮影しています。
上棟の様子その3。屋根組みが進みます。奥に見える長方形の木枠はドーマーになる部分です。この写真は足場に上がって撮影しています。
上棟の様子その4。垂木を施工する職人さん。余談ですが、新型コロナウィルスによるウッドショックと、ウクライナとの戦争でロシア産の木材が入ってこなくなった影響で、垂木に使う材木の価格も上がってきています。これから先、どこまで原材料費が上がるのか戦々恐々としています。
上棟の様子その5。屋根が組みあがり、家の形になってきました。この後、屋根の下地材を貼ったら、上棟完了となります。
上棟翌日のNA様邸。この日も良い天気でした。左奥に見えるドーマーの向こう側に白いヘルメットをかぶった職人さんがいます。彼は、屋根足場を組む足場屋さんです。NA様邸は6.7寸屋根で、屋根勾配が比較的急なので、工事の安全のために屋根にも足場を組んでいきます。
これが屋根足場です。6.7寸屋根の勾配は、角度にすると約34度です。スキーやスノボ経験のある方なら感覚的におわかりいただけると思いますが、30度を超える斜面でバランスを崩すとそのまま下まで転げ落ちてしまいます。6寸を超える急勾配の屋根は、雨漏りのリスクが少ない(雨水が滞留しないし、落葉などのゴミが屋根の上に溜まることも少ない)、デザイン性が高い、屋根裏が広くとれる、といったメリットの多い勾配ですが、一方で屋根足場が必要になってくるので、施工は大変だったりします。
こちらは床下を丁寧にクリーニングする職人さんの様子。床下エアコンを採用される場合は、特に念入りにクリーニングを行います。
(続く)