「たくさんの造作工事をミスなく施工するための工夫」と「基礎下断熱の作り方」と「すべすべの磨き丸太」の巻/2022年3月号
今月は、造作家具・造作工事いっぱいの府中市N様邸の工事レポートと、調布市NA様邸の基礎工事を題材にした、基礎下断熱の作り方講座をお届けします。まだまだ少数派の基礎下断熱ですが、メリットの多い工法で、もっともっと普及させていきたいと思っています。
目次
1.府中市・N様邸(セカンドリビングのある注文住宅)
2.調布市・NA様邸(ドーマーと土間のある注文住宅)
◎府中市・N様邸(セカンドリビングのある注文住宅)
5月の完成に向けて着々と木工事が進むN様邸。下の写真は、ロールスクリーンの収納ボックス一体型の窓枠です。巻き取り部分が丸見えなのは無粋なので隠したいというお客様からのリクエストを受け、窓枠ひとつひとつ、設計図面を起こして作っています。
こちらは2階の階段ホールに面した壁。壁の両脇にドアを設置して、その向こう側は子供部屋になります。この子供部屋手前の壁ですが、わずかな厚みを活用して、書棚を作る予定です。文庫本はきれいに、マンガはギリギリといった奥行の書棚になる予定です。奥行きは最小限ですが、収納力はかなり期待できると思います。
こちらは2階リビングの勾配天井に設置した昇降型ホスクリーン(室内物干し)の収納ボックスです。平らな天井に設置する場合は、ものすごく簡単な工事で済むホスクリーンですが、勾配天井に設置するとなると、途端に難易度が上がります。メーカー(川口技研)さんが用意している標準の収納ボックスは使えないので、天井の勾配に合わせて台形のボックスを造作して、天井に組み込んでいきます。
後日、完成写真を載せるときにたっぷり紹介しようと思いますが、N様邸は造作工事・造作家具がとても多い家で、グルメレポーターの彦摩呂さん風に例えると、「お家の中が造作の宝石箱や~」というかんじです。造作工事が多いと、必然的に補強用の下地材を入れたりする下準備も多くなります。あまりに多くて、大工さんも少々混乱気味だったので、社内で相談の結果、下の写真のようなチェックシートを貼ることにしました。これだけ念押ししておけば、安心です。
階段下収納を作る場所に貼ったシート。棚柱を入れるので、補強を忘れないでね、というメッセージです。
窓の上にカーテンレールを施工するので、壁の下地材にMクロスを入れてね、というメッセージ。Mクロスは、釘やネジの保持力が高い特別な下地材です。
キッチン背面にはカウンタータイプの収納家具を造作します。その際、壁面にタイルを貼るので、下地材としてラーチ合板を入れておいてね、というメッセージです。小さなコミュニケーションを積み重ねて、N様邸ができあがっていきます。
◎調布市・NA様邸(ドーマーと土間のある注文住宅)
調布市のNA様邸では、基礎工事が始まっています。今回はNA様邸の基礎工事を題材に、小野寺工務店の大きな特徴のひとつ、「基礎下断熱(基礎断熱ともいいます)」について詳しく説明してみたいと思います。
下の写真は、防湿シートの上から捨てコンクリートを施工した段階です。防湿シートは地面の湿気から基礎を守るためのものです。この段階では、一般的な基礎の作り方と大きな差はありません。強いてあげると、防湿シートと捨てコンクリートの施工が比較的丁寧なぐらいでしょうか。
奥の方に見える白い物体。これが基礎下断熱用の断熱材「パフォームガード」です。
型枠の内側と底面にパフォームガードを敷き詰めていきます。底面には頑丈な配筋を組むために畑の畝のような凸凹がありますが、その凸凹にそって、パフォームガードを加工して、隙間なく敷き詰めていきます。
防湿シートの上部は、どれだけ丁寧に施工しても多少のでこぼこがあります。そのため、先に砂を入れ、表面を平らにならしてからパフォームガードを敷いていきます。下の写真は防湿シートの上に砂を入れているところです。
パフォームガードの施工が終わりました。このように基礎の外側全体を断熱材ですっぽり包み込むのが基礎下断熱(基礎断熱)です。
小野寺工務店が採用している基礎下断熱ですが、実は基礎下断熱を採用している建築会社はまだまだ少数派です。では、他の建築会社はどういった方法を採用しているかというと、床下に断熱材を入れる床下断熱を採用しています。
床下に断熱層を作る床下断熱の場合、建物の基礎および床下の空間は「家の外」ということになります。基礎は巨大なコンクリートのかたまりで、コンクリートというのは、熱さも冷たさも蓄熱する力がすごいので、結果として冬、床下からシンシンと冷やされる底冷えのする家になってしまいます。
一方、基礎下断熱の場合、建物の基礎および床下の空間は「家の中」になります。地面から伝わる寒さ、暑さの影響を受けなくなるので、夏も冬も快適な住まいができあがります。また家全体を床下からじんわり暖めてくれる床下エアコンを利用できるのも基礎下断熱の家ならではのメリットです。
NA様邸の工事レポートに戻りたいと思います。下の写真は、敷き詰めたパフォームガードの上から配筋を組んでいるところです。中央に配筋が密になっている部分がありますが、この部分が地中梁です。耐震等級3の家を建てるために必要な構造体です。
断熱材の内側に組まれた配筋。基礎下断熱を端的に表している写真です。この後、底面にコンクリートを流し込んでいきます。
底面のコンクリート打設が終わり、立ち上がり部分の型枠の設置が進むNA様邸。
上の方から見るとこんな具合です。
NA様邸の基礎工事のレポートは、とりあえずここまでです。来月号では完成したNA様邸の基礎をお見せしたいと思います。
[おまけの写真]
こちらはNA様邸のリビングに使う杉の「磨き丸太」です。すでに材木問屋さんに発注済みで、倉庫の中で保管してもらっています。コロナ禍以降、材木の流通が不安定で、早め早めに発注して押さえておかないと、工事に間に合わなくなります。コロナ禍以前は1週間前に発注しても普通に手に入った材料が、今は3か月前に発注しても手に入るかどうかです。いろいろ苦労の多い時代になってしまいました。
直径12センチの杉の磨き丸太。すべすべの肌触りです。
(続く)